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降りてくるもの、湧いてくるもの


Writer : matsushi


Type/ : 2021-09-27 / blog

曲を作ったり、ギターのフレーズを考えたりしていると、必ず長考の時間が訪れる。
悩んでいる時の解決法は、
その1:一般化した方法論を試す。例えばコードの構成音プラス、テンションから音を探る。
その2:ひらめきを待つ。いわゆるインスピレーション。
その3:寝て考える。一番楽だが、案外効果がある。
と、人によって様々と思う。
ひらめきに関してはよく、降りてきた、とか湧いてきたとか言うと思います。
大そうな表現をしたければ霊感が…とアタマにつける。
たいていは過去に聞いた曲想だったりフレーズが記憶から蘇っているだけだけど、忘れているから降ってきたり湧いてきたりしたように錯覚しているだけである。
ちょうど夢に似ている。
夢は物語をいわゆる創造しているわけではなくて、当人の意識の中での実在の人物が登場し、やはり意識の中で現実に起こった事象が複雑に絡み合ってランダムに脳内で再現される現象である。
ただ面白いのは登場人物も事象も本人が記憶の中から再構成した物であるということ、主観であるということ。
これを「創造」と強引に言い換えると音楽の創造と同じ意味になる。
ここで、蘇った音楽的要素がどれだけ無意識によって再構成されたか、言い換えると変容されたか、が創造の度合いを測る目安となる。
元のメロディーに近ければ安易なコピーとなる。
そこに何か別の要素が加わっていればダリ的創造となる。
別の要素を加えるためには実は意識の作用が必須である。
夢のままでは作品にならないからである。
こういう経験はないだろうか?
休日にちょっとした買い物をしようと街を歩いていると、ふとメロディーが浮かんでくる。
繰り返し口ずさんでいるうちにノリノリになってくる。
これは名曲だ、というわけで夢中になって頭の中でいくつかの楽器のアレンジまでし始める。
これを忘れては世界の損失だ、というわけでメロディーを鼻歌でiPhoneに録音する。
こういうシチュエーションは過去に何度もあったが、いつもあとで思い出そうとしても思い出せなかったから、今ではポケットにICレコーダーとカメラとノートと音楽再生プレイヤーとインターネットが入っていてよかった〜というわけである。
さて、このあと家に帰ってiPhoneで聞き直してみる、言うまでもなく、そこには謎の、何の面白みもないメロディーが録音されているのみだった、というオチである。
音楽とはメロディーにあらず。
つまり降りてきたか湧いてきたかのモノは大したシロモノではないのである、間違いなく。
音楽の重要なモノとは、浮かんできたシチュエーションで、メロディーの裏にある雰囲気、感情、夢でいうところの「主観」なのである。ここに音楽の秘密があると考えている。


「僕は鉛筆と紙を持って長いこと考えます。例えば3週間くらい考えるとすると、いざギターを持って録音するのは2、3日です。
NGの曲はツーコード繰り返しでそこにチャーチモードでメロディーに変化をつけるものが多いのですが、僕は4小節パターンで曲に物語を足すのが役目です。」
「インプロビゼーションはそうして自分が足したコードの構成音で作るのが一番手っ取り早いのですが、基本モードで弾きながらコードの特徴音をフックして入れ込むのが好みです。」
「ギターはどうしてもジャラーンと鳴ります。それが個性でもあり制約でもあります。パンと鳴らしたい時は割り箸で弦を叩きます。ポンと鳴らしたい時は4本指でハジキます。」

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