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僕らの音楽遍歴6”オリビエ・メシアン;世の終わりのための四重奏曲”


Writer : kunio


Type/ : 2021-01-07 / blog

今回はオリビエ・メシアン フランスの現代音楽の作曲家。
ところで、2020年はジョン・レノンが亡くなって40年ということで、いきなりオノ・ヨーコの話題から。
ご幼少の頃、フランク・ロイド・ライトの建築作品としても有名な自由学園の幼児生活団に3ヶ月間通ったことがあり、ユニークな音楽教育を受けたと、後のインタビューで語っている。
それは、「身の回りのあらゆる音を楽譜に表しなさい」という課題、
まだ小学校にも行っていないオノ・ヨーコは、音楽的に聞こえる鳥の鳴き声でさえも、楽譜に完璧に表しきれないことを悟リ、後にコンセプチュアルアートに可能性を見出していくことになる、只者ではない。

そして、真逆の意味で只者ではないオリビエ・メシアンの話。
メシアンは頑なに鳥の鳴き声を楽譜に採譜し続けた。
それをピアノ曲にした鳥のカタログって言う曲もある。
(わたしには今一つ鳥の鳴き声に聞こえないが)
共感覚の持ち主だったらしく、音を聴くと色彩を感じるらしい。
冬期休暇に昔の音楽帳を整理していたら、20歳のころ「オリビエ・メシアンの分割法」なんていう図版を書き写したものが出てきた。昔の自分は随分勉強熱心だったようだ。そんなわけで、とにかく、この人の言うことなすことコムヅカシイ。

でも、作品を先入観なしで聞くと、すぐにメシアンオリジナルと分かる変拍子リフ、メロディ、ハーモニーがどんどん出てくるので、一旦ハマれば、ノリノリで聴ける。
代表作の1つ「トゥランガリラ交響曲」をナマのオーケストラ演奏で聴いた時は、血湧き肉躍るように興奮した。
シンセサイザーが世に出る前の電気楽器、オンドマルトノがめっちゃカッコいい。
わたしには、エマーソン、レイク&パーマーと同類の音楽に聞こえる。

メシアンの中でも一番美しい曲は、「世の終わりのための四重奏曲」ということに、異論を唱える方はそう多くないだろう。
色彩感豊かなピアノの和音の上に、この世のものと思えないような調性感の曖昧な旋律が漂い続ける恍惚感の体験は、少なからずNewsGatheringの音作りに影響を及ぼしている。私たちが目指すヨーロッパ的な要素の一つに違いない。
大戦中にドイツ軍の捕虜収容所で作曲、初演され、収容されていた音楽家の楽器に合わせて作曲されたことは有名だが、楽器編成が特殊なので、あまり演奏されない。
この曲を演奏するために、ピーターゼルキンを中心に新進気鋭の若者が集まった「タッシ」の演奏が最高に素晴らしい。
わたしは、70年代に「タッシ」が初演した武満徹のカトレーンⅡを聞いているうちに、この曲にたどり着いた。幸せ者だと思う。
最後にもう一つ余談を、南半球のタスマニアは日本と全く異なる動植物の楽園だ。
郊外の森林の中を散歩していると、今まで聞いたことのない鳥の鳴き声の大合唱に包まれて、まるで、違う惑星に来てしまったような感覚になった。地球はまだまだ広いと思った。
田舎のおみやげ屋さんで、タスマニアの鳥の鳴き声集のバッタもんCDを衝動買いした。日本に帰って、iTunesにCDを取り込もうとした時、CDDB (Compact Disc DataBase) がちゃんと鳥の名前をトラック名に表示してくれたことに妙に感動し、地球もずいぶん狭くなったなぁと思った。15年以上前の話である。
(メシアン:世の終わりのための四重奏曲、演奏:タッシ)