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犬の存在(その1)-存在と僕のストーリー(第一章)-


Writer : matsushi


Type/ : 2021-05-30 / blog

犬は好きな人、たいてい飼い主であるが、を見るとき目がまんまるになる。
犬は本来他者を見続けたりしないものらしいが、好きな人のことはジッと真っ直ぐに見続ける。
犬の目は人間の目とよく似ている。まつ毛と眉毛と白眼があるからだ。
この目で見つめられると犬好きにならずにはいられない。必殺の眼差しである。

とある日曜の昼下がり、いつものようにもーちゃんを膝の上に乗せてスマホをいじったり、テレビで映画を見たりしていると言った、「ねぇ私のことどう思ってる?」「大好きだよ、でも娘のように思ってるんだ」「まぁそうだよね、でも私はとーちゃんのこと大好きだから」

犬にとって飼い主は絶対的な存在である。
食べ物をくれ、世話をしてくれ、かわいがってくれる。
そんな人を好きにならないはずがない。ある意味生存本能である。

犬を飼っている人はよく分かると思うが、犬は人の言葉を理解する。
言語を文章として論理的に理解するのではもちろん無く、知っている単語と人の表情、前後の状況から文脈を感じ取り総合的に意味を理解している。
ユングの言うところの感情で思考する、が最も当てはまる表現だと思う。
ユングはもちろん犬を分析する心理学者じゃなくて人間を診る精神科医、学者だから、すなわち犬もまた人間同様、無意識を持ち理性を持つ存在であろうと僕は考えている。

僕は平日は仕事のために鎌倉に住み、週末になると東村山の自宅に帰る生活をしている。
月曜の朝に鎌倉に戻る時はもーちゃんはすごくアンニュイになっていることが分かる。
いつもなら朝起きてリビングに行くと小走りにかけよってきて飛びついてくるのだが、お気に入りのベッドから出てこない。
眉だけを動かしてこちらを伺っている。
「また行っちゃうんだね、だったら知らないフリする」とスネる。
「土曜に帰ってくるから」と僕は自分の両耳を横に引っ張って首を横に振る。
YKKのコマーシャルである。

つづく