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ぼくらの音楽遍歴4”David Sylvian”


Writer : kunio


Type/ : 2020-11-28 / blog

秋もだいぶ深まってきた。寒い季節になると聞きたくなるのがDavid Sylvian。
不思議な人だ、デビューは1978年JAPANという当時ニューロマンティックと呼ばれていたジャンルで、Duran Duranなどと同類の、いわゆる時流に乗っかって、いかにもというプロデュースされたバンドだった。
実はNews Gatheringは結成当初GenesisのabacabやDuran DuranのPlanet Earthなどをやりながら、バンドの方向性を模索していたことがある。
話をDavid Sylvianに戻すと、JAPANは短期間のうちに変貌して、Gentlemen Take PolaroidsやTin Drumという名作を発表して解散となった。
News GatheringはTin Drumにかなり影響を受けた時期もある。リズムの表と裏が入れ替わるような不思議なリズム構造にすっかり魅せられ、オリジナル曲にも取り入れた。ベースのMick Karnは第1回で紹介したBrand XのPercy Jonesをリスペクトしたフレットレスのベーススタイルなので、当然好きなベーシストだった。
JAPAN解散後初のリーダー作となるのが、画像のBrilliant Treesである。JAPANからソロへの移行期で両者の魅力がせめぎあう面白さがある。
もう一つの魅力は、多種多様な共演者である。このアルバムでは、短波ラジオなどで独特なサウンドエフェクトを加えるホルガー・シューカイ(のちに2人でアンビエントなアルバムを2作発表するが、今でも睡眠用に聞いている)、モジュレーションをかけたトランペットでイーノとの共作もあるジョン・ハッセル、ヨーロッパらしいトランペットでキース・ジャレットとも共演していたケニーホイラーなど、それぞれの個性が際立っていながらDavid Sylvianらしい世界観に収束しているところが本作の魅力だと思う。
このアルバムにはNostargiaという曲が収録されているが、当然タルコフスキー監督の同名映画のタイトルであり、同じ題名で作曲した武満徹とも対談したことがある。ジャンルも年代も違う音楽家が、同じ世界観を共有しているところが素晴らしいと思った。Rain Tree(雨の樹)といいう武満徹の作品に影響をうけたのだろうか、JAPANが一時期再開した時にはRain Tree Crowというバンド名で活動していたこともある。

ソロになってから、アルバムを重ねるたびに体感温度が下がっていく感じがする。2003年のBlemishに至っては真冬に聞きたい音楽だと思う。
このアルバムではデレク・ベイリーと共演していることに驚いた。
少し話がそれるが、私はデレク・ベイリーがかなり好きで、GuitarというソロギターのLPを愛聴していたが、誰かに貸したまま却ってこない。デレク・ベイリーはギターを使って即興演奏するが全くギターらしい音が出てこない、この人に比べると、アート・リンゼイのノイズギターですら音楽的に聞こえる。パットメセニーとも共演していたが、まったくスタイルがぶれないところが素晴らしい。で、実は普通のギターが弾けないのかと訝しく思っていたが、ギャビン・ブライヤーズのタイタニックの沈没などでは静謐なギターを弾いていたので、驚いた記憶がある。
ニューロマティックの貴公子だったDavid Sylvianは、いまや仙人のような風貌になり、思い出したように作品を発表してくる。振れ幅は大きいが、どの作品も彼らしい個性が出ている。音楽のレンジの広さと個性的という点では、いまでも大いに影響を受け続けている真のアーティストと言える。
(David Sylvian/Brilliant Trees)